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すべて真夜中の恋人たち / 川上未映子(講談社文庫)
気になってはいたのだ。
この作家さん。
でも なんか 勝手に考え過ぎて
遠巻きにしていた。
作品初読。
予想以上。
なんとも ひりひりした人である。
繊細さが 痛いほどで
ついには泣けてきた。
フリーの校閲を生業としている
孤独な30代後半の女性の物語。
でも その孤独感は彼女だけのものではなくて
一冊 ぜんぶに漂っている。
淋しさと それに基づいた怯えと 混乱が
いろいろな形を以て
登場人物たちに滲んでいる。
恋愛劇の局面においては
あまりに淡々と
どうにもならない感じが
川上弘美の「先生の鞄」を思い出させた。
んー でも もっと
どうにもならなかったけど。(笑)
好みは分かれると思うけれど
想像以上でした。
この感じは たまらない。
320〜323頁。
かわいくて せつなくて さみしくて
キュンとなった。
タダイマトビラ / 村田沙耶香(新潮社)
”「コンビニ人間」で受賞した人でしょ?“
… な感じで 初めての作家さんのつもりだったら
そうか 4年くらい前に
一冊 読んでいたのね。
いつも通り よく忘れてる。あたしったら。(笑)
http://anmitu-1.jugem.jp/?eid=301
その時の感想にも
最終展開の唐突さを書いているけど
これも同様でした。
アダルト・チルドレンから
ネグレクトに陥った母親。
それで家庭を顧みず
不在がちな父親。
この環境下で育った
アンバランスな姉弟。
いつか「本物の家を持つ」を目標に
生きる工夫をしながら
自分と折り合いをつけつつも
悶々とした姉・恵奈の物語。
中盤までは 揺れても
「本来・本物」 を求め続ける深層心理が
痛々しく綴られてたのに
かなり突如 開眼(崩壊?覚醒?)し
暴走し始めると 映画 ”シャイニング”よろしく
「ひょえ〜〜!」な オカルト展開。
わけわからん。
でも。
ちょっと前に読んだ
統合失調症の人の本のように
「ある日 突然に」やってくるようだから
そんなものなのかもしれん。
しかし 残りの家族たちの変貌が
あまりに 一足飛び過ぎて
腑に落ちない。
”家族”なんて 人間が創り出した
魔法の枠組みで悩むのはやめて
個も 全体も 一括りで
進化する一生物へ立ち戻れば
悩みも全部 なくなるよ。
そこへ 帰ろうよ。
父と呼ばれてた 母と呼ばれてた 生命体たちよ!
ようこそ その世界へ。
おかえり 本来のその世界へ。
… ってな風に
振り切っちゃってるあたりは
もしかしたら 好きな人には
たまらない麻薬的ワールドなのかもね。
いえいえ アタシは
”引いちゃう群”でしたけど。
盲目的な恋と友情 / 辻村深月(新潮文庫)
8〜9年ぶりの辻村ワールド。
当時「凍りのくじら」等
没頭するあまり 寝不足になったっけ。
http://anmitu-1.jugem.jp/?eid=70
この人はおもしろいけど
いき過ぎのディープさが ちょっと
少女コミックっぽかったっけ、などと思い出しつつ
久々に読んでみたら
あらま ほんとに そうでした。
大学のオーケストラを舞台に
指揮者として現れた
茂実星近(しげみほしちか)。
バイオリン担当の美少女
一瀬蘭花(いちのせらんか)。
第一バイオリンを務め
彼女の友人である 留利絵(るりえ)。
ネーミングから すでに100%少女漫画っぽく
お話はタイトル通りに
恋のぐるんぐるんと
女同士の友情のぐちゃぐちゃ。
蘭花・目線と 留利絵・目線の
ふたつの章で構成されている。
こういう組立ても最近 ほんとに多い。
流行ってるの?
だとしたら 流行過ぎ。
出だしはなかなか面白いのに
後半 留利絵の章になると
あまりに斜に構えた見解の連続で
ちょっと しんどい。
「きみ 性格が悪すぎる」
と つぶやきたくなる。
エンディングの括り方が
盛り上がるというよりは
駆け足で 強引過ぎ。
んーーーー。
解説で山本文緒さんは絶讃してるけど
あたしが振り回された
初期の作品の方が
作り込んでいて 良かった気がするな。
ちょっと 残念な感じ。
いや、しかし。
恋は盲目 とは云うけれど
思い込みの激しい子の「親友」感
ヘビーだわ〜。
でも ありうるね。
女は コワい。
リーチ先生 / 原田マハ(集英社)
マハさん十八番
史実ベースの物語。
これは明治末期 イギリスからやって来た
陶芸家バーナード・リーチを軸としたおはなし。
新聞連載作品ということで
意図的なボリューム感が
ちょっと気になるけれど
いい本でした。
いま 歴史の教科書で その名前を見る
そうそうたる面々が
その才能ゆえに どんどん絡み合って
輪を広げていった明治時代。
その時代のすごさは驚くばかり。
でもそれは あくまでも
ひとつの結果であり
本来 誰しもが
「名も亡き花」であると綴る
最終章は 読みながら泣きっぱなしでした。
リーチ先生を慕う
カメちゃん コウちゃん親子の想いが
切なくて ジンとする。
人間の邪念のないひた向きさは
いろんなことを教えてくれる。
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