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さすらい猫ノアの伝説 / 重松清(講談社文庫)
クラスのみんなが忘れてしまっているものを
思い出させるために やってくる
さすらい猫ノア。
児童文庫と思えばそれまでだけど
子どもも おとなも
心の弱さ・脆さ・迷い 実は同じ。
そして 子供の世界は それゆえ 逆に
実は酷だったりするもの。
おとなが読んでも
「あっ」と思い当たる箇所は ちらほら。
大切なことは 目に見えない。
ことばでも 説明しきれない。
だから 心で感じて すくい取るしかない。
その 気づきのきっかけへと
ニャンともふしぎな猫が
誘ってくれる。
ちょっと弱ってたり
元気を付けたい時に読むと良い。
数十年前 実家にいた猫が
いつも こちらの気持ちを読み取っているようで
「もしかして 神さまのおつかい?」と
幾度も感じたのを思い出した。
ノアも神さまのおつかい?
というか 神さまかな?
星の子 / 今村夏子(朝日新聞出版)
朝が来るまでそばにいる / 彩瀬まる(新潮文庫)
既読作品と同様
独特な質感の短編集。
http://anmitu-1.jugem.jp/?eid=455
http://anmitu-1.jugem.jp/?eid=549
生きていても 死んでいても
人間でも 動物でも
持ってても 無くしてても
あっても なくても
本当は区別あるはずのことが
実は表裏一体。
曖昧な境目の世界。
読みながら「あれ?」っと
こちらも引きづられ
入り込んでしまいそう。
ホラーと括れば それまでだけど
亡き者たちの嘆きや想いが
ひたひたと切実で
「牡丹灯籠」の哀しみのような。。。
表題作はなくて
全編がこのタイトルに繋がる作りで
「全部まとめて より面白い」という一冊。
”キモ怖・哀しさ”の名手ですな。
おらおらでひとりイグも / 若竹千佐子(河出書房新社)
63歳 史上最年長で芥川賞受賞と
話題になった本。
変わったタイトルが記憶に残り拝読。
なかなか 手強い。
遠野出身の筆者
ひたすら 東北弁で綴る。
これ かなり読みづらい。
とはいえ都市郊外に長く暮らすも
故郷語で思考する自分にこそ本質を見る
桃子おばあちゃんのリアルは確か。
字は違えど
同じ「ももこ」だった母が
晩年 こんな想いだったのかなと
良くも悪くも 老いての孤独と悟りを考えた。
「本当の自分」はどこにあったのか?
親子 兄妹 夫婦 家族
小さな社会単位の中
望まれるように振る舞ううち
自分の本質を見失う。
「はて どの時期が 本当だったのか?」
老いて いよいよ一人になって
振り返ったところで
どれもピンと来ない。
結局 「今?」と行き着く。
そうかもな。
素で生きるのは
単体にならないと
難しいのかもな。
引き換えに のしかかる”孤独”。
それは角度によっては七変化する
厄介な でも 実は心強い 老いの隣人。
「とにかくお年寄りには 優しくしよう」
読み終えてしみじみ思ったのは
わたし ひとり?
絶唱 / 湊かなえ(新潮文庫)
あまり選ばない作家さんなんだけど
どこの本屋さんでも
やたらと 平積みしてあって
「そんなに? ならば いざ」と 拝読。
4連作長編。
阪神・淡路大震災とトンガ。
かなりかけ離れた二つの土地が
各編それぞれの主人公と
ふしぎに繋がる。
書きたいことと 設定に距離があって
結果 散漫さを思う。
リアルが迫りづらい。
残念。
作家ご自身の体験も含まれているようで
想いが強すぎたか。
ただ 目に留まったのは
「死」を悲しみと捉えない
トンガの宗教観。
亡くなった人たちは
あちらの世界で
みんなまた会うという発想。
天国があって
死んだらみんな そこへ行く、
亡くなった 祖父祖母も
死んだ ひよこも金魚も
みんな あっち側へ行って
幸せに笑って過ごしている、
漠然と そう思い込む
子供時代が過った。
むらさきのスカートの女 / 今村夏子(朝日新聞出版)
芥川賞受賞時
なんとも気になるタイトルと
記憶に残っていたので
やっぱり読むことにしました。
今村作品 2作目。
忘れていたけれど
前回のは 好きな作風だった様子。
http://anmitu-1.jugem.jp/?eid=473
”黄色いカーディガンの女”こと 私 が
その地域で 変わり者の逸材と評判の
”むらさきのスカートの女”を
ひたすらに観察する物語。
「みたい」
「近づきたい」
「知りたい」
「暴きたい」
自分とは異質なのものに
人間がつい抱いてしまう
ストーカー的 好奇心。
「えー 気味悪い」
そう言いながら どこかで
多くに身に覚えある
深層心理なはず。
湿度がベタベタ高くならず
読みやすい文体で
けれど 薄ら気味悪い感を残して書いてある。
血生臭い幕引きになりそうなところを
「あれれ?」と思っているうちに
不思議な煙に巻かれて終結する
「全部 夢だった?」みたいなお話。
芥川賞受賞作の多くと同様
「 えー これ?」って意外感はありつつ
「直木賞」ではなく「芥川賞」
青い芽の力 というか
どこかで 納得できる気もしました。
生意気ながら。
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